日本の問題

上がらない実質賃金

富士通総研 上席主任研究員
米山秀隆 氏

「アベノミクス」で円安、株高が進んで以来、景気回復が進み、有効求人倍率(求職者1人に対し求人が何件あるか)が上昇し、失業率が低下するなど雇用情勢の改善が進んできた。人手不足のパートタイマーの時給上昇から始まり、ボーナスも増えるなど、名目賃金も徐々に上向いてきた。

しかし、物価上昇分を差し引いた実質賃金は今年2月まで22カ月連続で、前年同月比でのマイナスが続いている。「アベノミクス」によって物価が上向いたことに加え、昨年4月の消費税率引上げに伴う物価上昇が、実質賃金を目減りさせた。これは、名目賃金上昇がまだ物価上昇に追いついておらず、家計が実質的に使えるお金が増えていないことを意味する。

景気拡大がこの先も続けば、名目賃金上昇は次第に物価上昇に追いついてきて、この状態は解消されていくと考えられる。企業業績は好調に推移しており、今年の春季賃上げ率は昨年の2.19%を上回るのがほぼ確実である。また、消費税率引上げに伴う物価上昇(前年同月比)も今年4月には解消されるため、春以降、実質賃金は上昇に転じていく見込みである。

2015年4月20日

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1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏