飛躍の源泉

過疎と戦う地域の活力源

名城大学経済学部特任助手
大前 智文 氏

長野県飯田市南信濃地区、日本の秘境にも数えられる遠山郷に立地し、食肉処理・加工・販売を営む有限会社肉の鈴木屋。看板商品である羊肉、豚肉、鳥肉などに秘伝のタレをもみ込んだ「遠山ジンギス」に加え、狩猟・山肉文化が根付く地域において「本当においしい山肉」を提供する専門店として、地元だけでなく全国から評価を得ている。

1957(昭和32)年、ジンギスカンや山肉を処理・加工・販売する地域の精肉店として創業。転機は、鈴木理氏が二代目社長として事業を承継した2000年代後半。長期的な事業・経営計画を策定し、徹底的な衛生管理とトレーサビリティを実現した食肉処理・加工工場を新設するとともに、全国に販路を拡大するための営業展開に注力した。

大きな決断を下した直後にリーマン・ショックの影響から売り上げが減少。新工場の運営や社員教育にも困難が伴った。それでも「過疎との戦い」を合言葉に、50年先の企業像を見据えた取り組みに邁進するなかで業績が好転。「社員の成長が企業の成長に、企業の成長が地域の成長につながっている」という実感と手応えを得た。これからも地域の活力源として、顧客・社員・地域から支持される商品・企業づくりを志向する。

2016年4月11日

有限会社肉の鈴木屋 :

長野県飯田市南信濃和田1348
【有限会社肉の鈴木屋 HP】

過去記事一覧

大前智文

1982年愛知県生まれ。
2013年に名城大学経済学部特任助手に就任。同年より日本中小企業学会幹事。駆け出しの研究者としてフィールドワークを重ね、中小企業に関する調査・研究に取り組む。

大前智文