日本の問題

地方創生のカギ

ジャーナリスト
蟹瀬 誠一 氏

「地方創生」が叫ばれているが、効果は上がらず、現実には地方は衰退の一途をたどっているかに見える。なぜだろう。それは地方創生にとって肝心なものが抜け落ちているからではないだろうか。農業である。

フランスなどの欧州諸国をみれば、よくわかる。西洋史学者の故木村尚三郎氏によれば、欧州の農村は「どこでも、誰が見ても美しい」。文化が大都市より農村に、中央より地方に、都市より田舎にあるからだ。

たとえば、人口500人に満たないブルゴーニュ地方のサン・ペール村にはミシュラン2つ星のホテル・レストラン「レスペランス」があって世界各地から予約客が集まる。地元住民はパリに行きたいなどとは思っていない。「パリとの間に文化的落差がないという以上に、田舎の方が大都会より文化が上なのである」と同氏は分析する。

日本はそんな大切な地方の文化を再発見する時だ。農業を中心とした地方創生を行えば、生産、流通、小売り、サービスなど多くの人の働く場が生まれる。本来、農業は老若男女がコミュニティをつくって助け合う仕事だから定年もリストラもない。地方創生のカギは「農」にある。

2016年4月18日

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蟹瀬(かにせ) 誠一(せいいち) 氏

1950年、石川県生まれ。
上智大学文学部新聞学科卒業後、アメリカAP通信社記者、フランスAFP通信社記者、アメリカTIME誌特派員を経て、1991年TBS「報道特集」キャスターとしてテレビ報道界に転身。国際政治や経済、文化に詳しく、現在もテレビ東京「マネーの羅針盤」メインキャスターなどを務める。

蟹瀬(かにせ) 誠一(せいいち) 氏