日本の問題

シェアリングエコノミー

PHP総研 主席研究員
荒田英知 氏

世界で広がりを見せる「シェアリングエコノミー」が日本でも本格化しそうである。これは「遊休資産をシェアするサービス」とされ、空き家を観光客に貸す「民泊」、移動の際の「カーシェアリング」、労働力や専門技能を調達する「クラウドソーシング」、不特定多数から出資を募る「クラウドファンディング」など、多様な「ヒト・モノ・カネのシェア」が始まっている。

いずれも、資産を自分で「所有」するのではなく、必要な時にだけ「利用」するという考え方に基づく。その仲介をタイムリーに可能にしたのが、ソーシャルメディアやスマートフォンの普及である。

地方自治体ぐるみで「シェアリングシティ」をめざす取り組みも始まった。佐賀県多久市など5市は、「子育てシェア」や「空きスペースシェア」などで、「公助」から「共助」のまちづくりを進める。

様々な資産を有効利用することで、社会の効率性は全体としては高まると考えられるが、一方で所有を前提として行われてきた企業活動とは相反する側面も持つ。世界の動きをにらみつつ、新旧の秩序をどう調和させるかが問われてくる。

2017年1月4日

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荒田英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学法文学部を卒業。同年、PHP研究所入社。各種研究プロジェクトのコーディネーターを務めた後、地域政策分野の研究に専念。2010年10月から現職。全国各地を数多くフィールドワークしている。

荒田(あらた) 英知(ひでとも)氏