飛躍の源泉

新たなスプリング用途の開拓

東京経済大学経営学部准教授
山本 聡 氏

1957(昭和32)年に創立した株式会社鎌田スプリングの主力事業のひとつが、各種スプリングの製造・販売だ。シャッター用やカセットテープレコーダー用のバネを製造していたが、カセットテープの需要減少に伴い、様々な用途のスプリングの生産を開始。近年は医療機器関連、中でも内視鏡の構成部品としてのスプリングを主力に製造している。また10数年前からは医療用注射針も展開し、事業の柱になっている。

そんな同社の生産拠点が栃木県鹿沼市にある鹿沼工場のスプリング棟とメディカル棟だ。ある日、内視鏡用のスプリングの端材を工場の外に置いておいたところ、周辺の畑にたびたび出没していたカラスが工場に近付かなくなり、どうやらスプリングを嫌っているらしいことがわかった。

この発見から生まれたのがカラス除け製品「いやがらす」である。同社は宇都宮大学農学部の研究者と連携し、「いやがらす」の効果を科学的に検証したうえで、カラス被害に悩む農家に販売。ほかにも、スプリングをトンネル代わりにした「メダカ産卵用トンネル」や害虫除けの「超反射プレート」も開発している。

自社開発商品として、医療機器に続く新たな事業分野への挑戦を続けている。

2017年2月6日

株式会社鎌田スプリング :

埼玉県さいたま市大宮区北袋町1-165
【株式会社鎌田スプリング HP】

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山本聡

1978年生まれ。
機械振興協会経済研究所を経て、2012年東京経済大学経営学部専任講師として着任、2015年准教授(担当は中小企業経営論)。金型や部品加工など素形材産業を主な対象としながら、国内外の中小企業の経営体制の変化を解明することが研究テーマ。経営者や技術者向けにレポートを執筆するほか、さまざまなセミナー講師も務める。
【山本聡の研究室】

山本聡