飛躍の源泉

「人活企業」が「革新企業」に

立教大学経済学部教授(金融論)
山口 義行 氏

中小企業の多くが人手不足に悩まされている今、数少ない人材を活用して大きな付加価値を生めるかどうかが企業の命運を握っている。そこで今回は、人を活かすことで成長を続ける「人活企業」を紹介したい。

愛知県名古屋市の株式会社太田電工社は、電気工事と通信工事の2事業を展開。2つの工事の両方を展開する中小企業は珍しい。同社も以前は電気工事専業だったが、代表取締役の太田厚氏が通信業界の変化をいち早く察知し、通信業へシフトさせていった。

最初は職人からの反発も大きかったというが、他社でできないことにこそ「付加価値」がある。通信工事会社へ1人ずつ順繰りに出向させて通信工事を担える職人を増やし、自社でスキルアップできる環境をつくった。

次に目指したのは、「管理」ができる職人だ。見積もりや相手企業との交渉といった仕事の価値を決める工程も担えなければ、仕事量を増やすことでしか利益を伸ばせない。大企業をリタイヤした人材を新規に雇用し、職人たちの教育にあたってもらった。中小工事業の現状を変えなければ、社員の幸せはない。そのためにはまず社員たちから変わっていくこと―。革新を遂げた同社は成長を続けている。「人活企業」は「革新企業」なのだ。

2017年2月13日

株式会社太田電工社 :

愛知県名古屋市昭和区元宮町6-30-1
【株式会社太田電工社 HP】

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山口義行(やまぐちよしゆき)氏

1951年愛知県生まれ。
2001年に立教大学経済学部教授に就任。外務省参与として中小企業の海外展開、関東経済産業局「新連携支援」政策の事業評価委員長として中小企業連携支援にかかわるほか、企業経営者との勉強会を全国で開催するなど、自ら中小企業支援を積極的に展開。
【山口義行・公式HP】

山口義行氏