日本の問題

ふるさと納税による交流促進

富士通総研 主席研究員
米山秀隆 氏

ふるさと納税の返礼品競争を抑えるため、総務省は今年4月に、返礼品額を寄付額の3割以下にするよう通知した。豪華な返礼品を競っていた自治体は見直しを迫られたが、こうした競争とは距離を置き、ふるさと納税をユニークな形で活用してきた自治体として北海道東川町がある。

東川町では、多くの人々の共感を得る事業を提示して寄付を募り、寄付してくれた人々との交流を重視している。東川町は高校生の写真コンテストである写真甲子園を1994年から開催しているが、これに関連した写真の町整備事業、写真甲子園映画制作支援事業などを提示している。

寄付した人は「株主」と位置づけられ、特別町民となり、返礼品のほか、町の宿泊施設への年間6泊までの無料宿泊の特典が受けられる。年1回の株主総会に出席する航空機代の補助もある。本州から写真甲子園やクロスカントリーなどで東川町を訪問した人が、ついでにふるさと納税を行っている例が多いという。何らかのきっかけで東川町に興味を持ってくれた人に、寄付をしてもらうことでその後の交流が続くという好循環が生まれている。

2017年8月14日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏