日本の問題

次期日銀総裁の課題

富士通総研 主席研究員
米山秀隆 氏

日銀の黒田東彦総裁は2%の物価上昇目標こそ達成できていないが、景気拡大を持続させ、デフレでない状況に変えた点は高く評価できる。逆に、早期に目標を達成した場合、引き締めに転じ、景気拡大が短期間で途切れるところだった。現在2%は事実上の中長期目標と位置づけられ、緩和維持の段階に入っている。日銀の長期戦は財政再建にも役立つ。7月の試算では2020年度政府債務残高のGDP比は1月時点より改善した。長期金利抑制による。

政府は財政再建の目標を、達成困難になった2020年度の基礎的財政収支の黒字化に変え、債務残高のGDP比引き下げを重視しつつある。金利抑制と成長で債務解消を図る現実路線。結果として、今後の金融政策と財政政策はリンクする方向となる。歴史的にみて、債務残高が累増しても国の経済基盤が強ければ、ハイパーインフレは招かず、成長と緩やかなインフレで長い時間をかけて解消できることがわかっている(第2次大戦後の米国など)。

今後の日銀は長期金利抑制姿勢を維持し、暗黙のうちにこの方向を支援していかざるを得ない。次期総裁の大きな課題だ。

2017年10月10日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏