日本の問題

中小企業の賃上げ減税

経済ジャーナリスト
大西良雄 氏

2018年度税制改正では、中小企業が平均給与等支給額を前年度より1.5%以上増加させれば給与等支給総額増加分の15%を法人税額から控除できる減税案が盛り込まれた。3%以上の平均給与等支給額増加が条件となる大企業より緩い条件だが、今春闘でも賃上げを継続して平均給与等支給額を1.5%以上増加させ、税額控除を申請する中小企業が増えるかどうか。

まず春闘賃上げだが、従業員300人未満の中小企業の2017年度の月例賃金引き上げ率は1.87%(連合ベース)だった。2018年度に前年度並みの賃上げが実現すれば1.5%以上という平均給与等支給額の増加要件を達成できる計算になる。

ただ、国税庁「平成27年度会社標本調査」によると、約264万法人のうち欠損法人(所得金額が0以下の法人)が64%を占め、そのほとんどが中小企業だ。欠損法人はそもそも所得がなく法人税の税額控除を受けられない。長期の景気拡大に伴い欠損法人は減少傾向にあるが、中小企業では労働力不足や人件費増が深刻度を増している。欠損法人が高止まりすれば、せっかくの賃上げ減税も絵に描いた餅になりかねない。

2018年2月13日

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大西良雄 氏

1945年生まれ。
上智大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。記者を経て、「週刊東洋経済」編集長、取締役出版局長、同営業局長、常務取締役第一編集局長を歴任。2006年に退任後、経済ジャーナリストとして独立。早稲田大学オープンカレッジ講師も務める。

大西(おおにし) 良雄(良雄)氏