日本の問題

円安局面の終焉

青山学院大学教授、元財務官
榊原英資 氏

2012年11月には月平均で1 ドル=約80.8 円だったドル円レートは安倍晋三政権の公約である金融緩和と翌4 月からの黒田東彦日本銀行総裁による「異次元金融緩和」で円安に転じ、2014 年12月には1時1ドル=120 円を突破した。日銀の金融緩和に加えて、アメリカの利上げの予測がドル高・円安を後押ししたのだった。日経平均株価も2012 年の年間最安値8295.63 円から大きく上昇し、2014 年の年間最高値は1万8030.83 円と1 万8000 円を上回ったのだった。

しかし、マーケットは既に日銀の金融緩和とアメリカの利上げを折り込み、円安局面は終了しつつある。折からギリシャ危機に端発した南ヨーロッパ危機がユーロの下落につながり、一時1ユーロ=1.4 ドルに近かったユーロドルレートは1.13 ドル前後まで下がってしまったのだった。ユーロドル、さらにはユーロ円レートのユーロ安はドル円でも円高につながっていった。ヨーロッパを中心とする世界経済の景気後退は、安全通貨としての円への需要を増大させ、ドル円レートも緩やかな円高局面に入ったのだ。

2015年4月6日

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1941年生まれ。
1965年大蔵省(現財務省)入省。東海財務局長、大臣官房審議官(国際金融局担当)、国際金融局次長、国際金融局長を経て1997~1999年財務官。現在は青山学院大学教授、財団法人インド経済研究所理事長。
【財団法人インド経済研究所HP】

榊原英資氏