飛躍の源泉

赤レンガ復元をブランドに

立教大学経済学部教授(金融論)
山口 義行 氏

愛知県常滑市の株式会社アカイタイルは、老舗のタイル製作会社だ。常滑といえば焼き物の街だが、需要低迷や安い輸入品との競合により、この10年でタイル会社は3分の1まで減少。同社も大手の下請け仕事が大半で、原材料費が上がっても価格を自社で決められないなど、厳しい状況が続いてきた。

だが、同社には老舗として培ってきた確かな技術力はあった。それを示したのが、東京駅赤レンガタイル復元プロジェクト。原料の調合から窯の温度設定まで6年の歳月を費やして試行錯誤を繰り返し、戦災で消失した丸の内駅舎の赤レンガ復元を一手に担った。

この業績を生かせ―3代目社長の赤井祐仁氏はブランディング・プロデューサー安藤竜二氏の支援を得て、復元技術そのもののブランディングに取り組んだ。建物を復元し、そこにある歴史や人々の想いをも未来へ継承していく。立ち上げた「復元屋」というブランドは、東京駅の話題性も追い風となり、アカイタイルを脱下請けへと導いた。

「復元屋」は法人として独立。自社製品で商売ができるという希望が、社内に「次は何をやろう!」という“わくわく感”をもたらした。ブランディングは大企業の専売特許ではない。中小企業にこそ必要な“武器”だ。

2015年5月11日

株式会社アカイタイル:

愛知県常滑市金山字北大根山1-9
【株式会社アカイタイル HP】

過去記事一覧

1951年愛知県生まれ。
2001年に立教大学経済学部教授に就任。外務省参与として中小企業の海外展開、 関東経済産業局「新連携支援」政策の事業評価委員長として中小企業連携支援にかかわるほか、企業経営者との勉強会を全国で開催するなど、自ら中小企業支援を積極的に展開。
【山口義行・公式HP】

山口義行