日本の問題

米国の主張する「FFR」

学習院大学国際社会科学部教授
伊藤元重 氏

トランプ政権の通商政策のキーワードは「FFR」である。FREE(自由)、FAIR(公正)、そしてRECIPROCAL(相互主義)を略したもの。このキーワードで考えると、米国が行おうとする通商政策の基本的姿勢がよりよく見えてくる。

たとえば自動車であるが、米国は欧州や日本に対して自動車の市場開放を求めて、自動車の関税率を25%まで引き上げる検討をしている。米国の現在の自動車の関税率は2.5%なので、関税率を10倍に上げるというべらぼうなものである。

ただ、米国の国民はこう言うかもしれない。「米国の関税率は2.5%なのに、欧州は10%だ。欧州車が大量に米国に入ってくるので、米国のメーカーは苦しんでいる。これはフェアではない」と。だからといって、関税を10倍にして良いわけではないが、現存するアンフェアな状態を解消したい、というのがトランプ大統領のメッセージなのだ。これまで25%だった中国の自動車の関税率などは米国からみればアンフェアの極みなのかもしれない。

そうしたことがあるのか、このところ、トランプ大統領の支持率は少しずつ上昇している。米国民のかなりの人がトランプ政権の通商政策を支持しているようで、気になる。

2018年6月25日

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伊藤元重 氏

1951年生まれ。
米国ヒューストン大学経済学部助教授、東京大学経済学部助教授などを経て1993~2016年東京大学の経済学部と大学院経済学研究科の教授を歴任。2007~2009年は大学院経済学研究科研究科長(経済学部長)。現在、学習院大学国際社会科学部教授、東京大学名誉教授。
【伊藤元重研究室】

伊藤元重(いとう もとしげ)