日本の問題

物価の「基調」

富士通総研 上席主任研究員
米山秀隆 氏

消費者物価上昇率の鈍化が続いている。6月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比0.1%上昇とゼロ近傍になった。消費税率引き上げの影響を除くと、2014年4月の1.5%をピークに低下傾向が続いている。

背景には、税率引き上げ後の消費不振の長期化と原油価格下落がある。とりわけ原油価格下落の影響は大きく、先行きはエネルギー価格のマイナス寄与が拡大していくため、消費者物価は夏場にかけ、一時的に前年比マイナスに陥ることが予想される。

もっとも、原油価格下落の影響による一時的マイナスは既定路線。問題はそれを除いた物価の「基調」が、どのように推移しているかである。基調を示すひとつの指標である、生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価指数は1~2月を底に上向いており、前年比1%の上昇も視野に入っている。

物価の基調が今後強いものになるかどうかは、幅広い物価上昇を許容するほど需要が強くなるかどうかがポイント。賃上げやボーナス増加に伴う賃金増加は消費のプラス要因、株価上昇の持続による消費者マインドの好転も好材料である。

2015年8月10日

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1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏