スポーツ百話

35歳になったマラソンランナー
今井正人の矜持

スポーツライター
酒井 政人 氏

3月3日の東京マラソン。かつて「山の神」と呼ばれた今井正人(トヨタ自動車九州)が終盤、意地を見せる。

「自分に負けないように」と胸を叩くと、ライバルを競り落とし、冷たい雨にも勝った。2時間10分30秒で日本選手2位に入り、マラソングラウンドチャンピオンシップ(MGC)の出場権をつかんだ。振り返ると、4年前の東京マラソンも今井が主役だった。

現役最高の2時間7分39秒をマークして、北京世界選手権の代表をつかんだ。しかし大会直前に髄膜炎を患い、欠場。その後、7歳以上若い大迫傑、設楽悠太、井上大仁、服部勇馬に記録を越えられた。「今井は終わった」。そんな声が聞こえても、「一歩でも半歩でも前進できていると思ってやっています」と前を向く。MGCは9月15日。「オリンピックのマラソンで勝負したい」。35歳にして、高校時代から抱く夢に再び近づいた。

2019年4月1日

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酒井 政人

1977年生まれ。
箱根駅伝を目指し、東京農業大学に進学。1年時に同駅伝10区に出場。卒業後からライター活動を開始。著書に「箱根駅伝ノート」「東京五輪マラソンで日本がメダルを取るために必要なこと」など。