飛躍の源泉

自前の超精密技術で、新事業展開

東京経済大学経営学部准教授
山本 聡 氏

東京都東久留米市の有限会社三井刻印は、微細・小径エンドミルの設計から製造・販売までを行う。創業は1912( 大正元)年。創業者の三井月申(げっしん)氏は手掘りの彫金・彫刻師であったが、2代目満氏が、高硬度材のベアリングレース向け刻印を始め、その後、刻印専用の書体やレイアウトの規格化も図る。

こうした中で蓄積されたのが微細加工の技術だ。内製化した工具が同業者から「売ってほしい」といわれるほど評判を呼んだ。2000年には、理化学研究所から、「CBN(立方晶窒化ホウ素)製の工具を作らないか」と声がかかる。当時は、刻印の受注が停滞し、海外でもレーザーマーキングによる技術が台頭していた。共同開発した小径CBN工具は、大手企業に納入されるなど大きな転機となる。さらに2007年には、福岡工業大学と連携し、PCD(ダイヤモンド焼結体)工具に着手。先端の外径が1mm以下と非常に微細なそれは、ダイヤモンドの高耐久力を生かした長時間加工が可能な製品で注目される。

現在、工具の売り上げが全体の30%以上を占めるという同社、3代目社長の健一氏は展示会やインターネットを中心に自社の技術を発信、オーダーメードの工具も1本からでも受注し、その技術で業績を伸ばしている。

2015年7月20日

有限会社三井刻印 :

東京都東久留米市前沢3-1-5
【有限会社三井刻印 HP】

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1978年生まれ。
機械振興協会経済研究所を経て、2012年東京経済大学経営学部専任講師として着任、2015年准教授(担当は中小企業経営論)。金型や部品加工など素形材産業を主な対象としながら、国内外の中小企業の経営体制の変化を解明することが研究テーマ。経営者や技術者向けにレポートを執筆するほか、さまざまなセミナー講師も務める。
【山本聡の研究室】

山本聡