日本の問題

「高圧経済」の功罪

富士通総研 主席研究員
米山秀隆 氏

日本経済全体の需要と供給力の差を示す需給ギャップは、プラスであれば需要が、マイナスであれば供給力が上回っていることを示す。日銀によれば、2017年10~12月時点の需給ギャップはプラス1・5%と、10年ぶりの高水準となった。景気の過熱ぶりを示している。

景気が過熱すれば、金融を引き締めるのが通常であるが、日銀は現在も異次元緩和を維持している。長期間にわたって需要が刺激し続けられた経済を「高圧経済」と呼ぶことがある。この効果を考える場合には、逆に長期低迷が続いた経済を考えればよい。バブル崩壊後の日本において、新卒採用が大幅に抑制されて就職困難に直面した世代は、早期に職業能力を形成する機会を奪われたばかりか、生涯年収も悪影響を受けた。こうした取り返しのつかない悪影響を避けるためには、需要刺激を怠らず、高圧経済を保つのが望ましいという考え方も成り立つ。

高圧経済はバブルを招く懸念もあるが、現在のように、高圧経済の結果として人手不足が極限まで行き着き、人手に頼らないイノベーションが刺激される場合もある。これは、人口減少に直面する日本にとって必要な改革であり、高圧経済のプラス面が現れているといえる。

2018年5月7日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏