日本の問題

マンガ大国・ニッポン

慶應義塾大学大学院教授
中村 伊知哉 氏

日本のマンガは海外でも人気がある。スポーツ、ヒーロー、ギャグ、恋愛、学園もの、経済、歴史、政治、食べ物、科学。これほどマンガが発達している国はない。

小説でも映画でも絵本でもなく、マンガでしか表現できないものが確かにある。小説と違って言葉の壁を越えやすいし、子どもから大人まで楽しめる親しみやすさも特徴。また、映像と違って読み方や読むスピードが読者にゆだねられるメディアでもある。

一方で、マンガの世界にもデジタル化の波は確実に押し寄せている。日本のように紙のマンガが発達している国では、漫画家も出版社もデジタル化はこれからが本番であり、むしろお隣の韓国のようにマンガが新たな産業となりつつある国のほうがデジタル化は早い。

これから世界中の人々がスマートフォンでマンガを読む時代になるだろう。マンガ先進国・日本にとってピンチであると同時にチャンスでもある。描き方も読まれ方も変わるし、産業としても変わる。マンガの世界が広がるのだ。日本のマンガの良さを残しつつ、変化に対して柔軟に対応していくことも求められる。

2015年9月14日

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1961年生まれ。慶應義塾大学大学院 教授。政策・メディア博士。
ロックバンド「少年ナイフ」ディレクター、郵政省、MITメディアラボ客員教授、スタンフォード日本センター研究所長を経て 2006年慶應義塾大学教授。内閣官房知的財産戦略本部検証・評価・企画委員会座長、デジタル教科書教材協議会事務局長などを兼務。

中村伊知哉