日本の問題

デジタル・トランスフォーメーション

学習院大学国際社会科学部教授
伊藤元重 氏

技術は加速度的に進歩している。それに対して、企業や個人の行動やメンタリティーは少しずつしか変化していない。この2つの大きな格差が、多くの企業に不安感を与えている。自分たちはこの変化に取り残されるのではないだろうか、という不安感である。これに対して、技術革新をもう少し前向きに捉える向きもある。技術を利用してビジネスモデルを変えていこうという考え方だ。これを「デジタル・トランスフォーメーション」と呼ぶ。デジタル技術によって、企業の風土や経営を変えようというのだ。

ブリヂストンの例をあげてみよう。タイヤは韓国や中国の安い商品の攻勢で厳しい競争にさらされている。ただ、これは消費者向けのB to Cの世界の話で、鉱山車両や飛行機など、特殊なタイヤの市場は違う。こうしたB to Bの世界では、顧客のニーズは多様で、それに応えるソリューションを提供することが求められている。

そこで武器となるのが、タイヤの中に装着したセンサーだ。これを通じてタイヤの状態についての様々なデータがリアルタイムで集まる。それを使って、顧客により高い品質とサービスを提供するのだ。IoT(モノのインターネット)によって、タイヤのビジネスモデルが変わろうとしている。

2018年5月14日

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伊藤元重 氏

1951年生まれ。
米国ヒューストン大学経済学部助教授、東京大学経済学部助教授などを経て1993~2016年東京大学の経済学部と大学院経済学研究科の教授を歴任。2007~2009年は大学院経済学研究科研究科長(経済学部長)。現在、学習院大学国際社会科学部教授、東京大学名誉教授。
【伊藤元重研究室】

伊藤元重(いとう もとしげ)