日本の問題

AIIBとADB

青山学院大学教授、元財務官
榊原英資氏

2015年6月29日、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立協定の調印式が行われ創設メンバー57カ国のうち50カ国が署名した。中国財務省は手続きが終わっていない7カ国も年末までに署名できると説明している。日本は今のところ参加を見送っているが、イギリス・ドイツ・フランスなどヨーロッパ諸国の多くは参加している。

AIIBの事務総長は金立群氏。2003~2008年にはアジア開発銀行(ADB)の副総裁を務めた国際金融の専門家だ。金氏は現在は事務総長だが、いずれ初代総裁になるとみられている。出資比率は中国が30.34%と2位のインド(8.52%)、3位のロシア(6.66%)を大きく引き離しており、議決権も約26%で、参加国の中で唯一拒否権を持っている(重要事項の決定には75%以上の賛成が必要)。

中国主導の色彩が非常に強い。ちなみに日本が総裁を出しているADBの最大出資国は日米の各15.65%。日米の影響力は強いが1国が支配できる状況にない。

AIIBとADB。対立か、共存か。アジアにおける日中の影響力の行方も絡み、今後の動静に注目していくべきだろう。

2015年9月21日

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1941年生まれ。
1965年大蔵省(現財務省)入省。東海財務局長、大臣官房審議官(国際金融局担当)、国際金融局次長、国際金融局長を経て1997~1999年財務官。現在は青山学院大学教授、財団法人インド経済研究所理事長。
【財団法人インド経済研究所HP】

榊原英資氏