日本の問題

景気の読み方

東洋大学国際学部教授・慶應義塾大学名誉教授
竹中 平蔵 氏

景気が良いか悪いかは、常に多くの人々の関心事項だ。回復に向かっているのか、逆に下降に向かっているのか、その方向性も知りたいことだ。

景気の現状を知る最も手っ取り早い方法は、内閣府のホームページにある「月例経済報告」。この報告は、総理大臣や主要閣僚の前で、経済財政政策担当大臣(現在は茂木敏充氏)が経済の現状を説明するものだ。最新(4月)の報告によれば、「景気は、緩やかに回復している」となっている。

実は、もうひとつ便利なものがある。同じく内閣府が毎月発表している「景気ウォッチャー調査」だ。これは、各地の経済最前線にいるタクシーの運転手や小売業経営者など約2,000人に、景気の実感を直接聞くものだ。実は、景気がどうなるかという“読み”をする際に、このアンケートが一番正確、つまり“当たる”のである。私が政府の中で仕事をしている際も、景気の読みで一番頼りになる存在だった。

アメリカでは、ノーベル賞を受賞した故クライン教授らが中心になって、毎週GDPを推計する試みがある。3カ月に1度発表されるGDPの基となる各種統計を時系列分析で推定し、実際の統計が発表されるたびに毎週置き換えていく。こういうものが日本にもあれば、便利だと思う。

2018年5月21日

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竹中平蔵 氏

1951年生まれ。
ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学教授などを経て2001年の小泉内閣発足後、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣などの閣僚を歴任。現在、東洋大学国際学部教授、慶應義塾大学名誉教授。政府の各種会議のメンバーも務める。
【竹中平蔵公式ウェブサイト】

竹中平蔵(たけなか へいぞう)