きらめき企業

闘病経験から生まれた
人に優しいカトラリー

神戸国際大学経済学部教授
中村 智彦 氏

株式会社猫舌堂(大阪市)の代表取締役社長、柴田敦巨(あつこ)氏は2014年にがん治療を経験し、その影響で食物をうまくかめずに食べこぼしてしまうようになり、さらに味覚異常も重なって「食べる」行為自体に「バリア」を感じるようになった。その原因として特に問題だと感じたのが、スプーンやフォークといった「カトラリー」の使いにくさ。既存製品は幅が広すぎて口から食物がこぼれたり、触感が口に合わなかったりした。

関西電力に勤務する柴田さんはこの問題を解決しようと、カトラリーを開発・販売する社内ベンチャーを提案し、起業した。同じ境遇の仲間と一緒に開発する手法を「ピアメイド」と名づけて取り入れ、新潟県の燕三条地場産業振興センターに思いを伝えて協力を依頼。試作を繰り返し、1㎜単位で調整をする職人技で、納得のいく製品が生まれた。

大きく口を開けなくてもよいように幅を狭く、厚みも薄く作られているカトラリーは麻痺があったり、食事に困難を感じていた人たちだけでなく、介護を提供する立場の人や、小さめのカトラリーが欲しかった人たちにも好評。柴田氏は「これからも、ありそうでなかったモノやサービスをカタチにしていきたい」と話す。

2020年11月16日

株式会社猫舌堂 :

大阪市北区中之島3-6-16
【株式会社猫舌堂 HP】

過去記事一覧

中村智彦氏

1964年生まれ。
大阪府立産業開発研究所などを経て2007年から神戸国際大学経済学部教授。専門である中小企業論・地域経済論では、現地での調査・研究を重視。中小企業間のネットワーク構築や地域経済振興プロジェクトにも数多く参画している。
【凡才中村教授の憂鬱 HP】

中村智彦氏