日本の問題

民泊新法

九州国際大学非常勤講師
荒田英知 氏

一般住宅に旅行者を泊める「民泊」が新たな段階を迎える。6月15日に民泊新法(住宅宿泊事業法)が施行されるからだ。民泊は急増する外国人観光客の受け皿や、シェアリングエコノミーの旗手としてここ数年注目をあびてきた。

従来、「業」としての宿泊は旅館業法に基づき許可を受けた旅館やホテルにしか認められていなかった。需要の急増を後追いする形で、国は東京都大田区などで民泊特区を創設。しかし、実態としては「ヤミ民泊」が多数を占め、騒音などに対する近隣住民からの苦情や治安上の課題が指摘されていた。

民泊新法は全国的なルールを初めて定めるもので、登録すれば誰でも年間180日を上限に民泊を営むことができる。ところが、多くの事業者は様子見を決め込んでいる。その大きな理由は、自治体が条例によって新法を「上書き規制」できる余地があるからだ。

実際に京都市は住居専用区域での営業を60日に制限するなど、独自の条例を制定した。他の自治体でも区域や期間に独自ルールを検討する例が相次いでいる。民泊を推進したい国と、地域コミュニティとの調和を重視する自治体との温度差が、民泊の先行きを左右しそうだ。

2018年6月4日

過去記事一覧

荒田英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学法文学部を卒業。同年、PHP研究所入社。各種研究プロジェクトのコーディネーターを務めた後、地域政策分野の研究に専念。2017年10月から現職。全国各地を数多くフィールドワークしている。

荒田(あらた) 英知(ひでとも)氏