時代を読む

自動運転は過疎を救うか

地域政策研究家
荒田 英知 氏

世界各国が開発にしのぎを削る自動運転技術。完全自動運転のひとつ手前であるレベル4が2023年の法改正で日本でも可能になり、限定したエリアを走行する実証実験がスタートした。その舞台は地方である。

先陣を切ったのは福井県永平寺町。「ZEN drive」と名付けられた運転手のいない車両の運行が 5月21日に始まった。えちぜん鉄道永平寺口駅と永平寺門前を結ぶ町道のうちの約2kmに敷設された電磁誘導線上を時速12km以下で走行している。

オペレーターが同乗するレベル2の自動運転では、茨城県境町が2020年11月から全国初の公道定期運行を行い、実績を積み重ねてきた。道の駅をターミナルに役場、郵便局、病院、学校、高速バス乗り場などを2系統で結ぶ。レベル4解禁を受けて、対応可能なエストニア製車両を導入し10月にも運行を始める。

地域の公共交通をいかに維持していくかは、過疎地をはじめとした全国共通の課題。バスや鉄道の民間事業者が縮小や撤退に向かう中、多くの自治体は主要施設を結ぶコミュニティバスを整備してきた。

決まったルートを通るという点ではレベル4の自動運転と親和性が高いと考えられる。公共交通分野も担い手不足が深刻であり、両町に続く自治体が増えていくことであろう。最新技術の粋を集めた自動運転が、地域が抱える難題解決に貢献する日がくることを期待したい。

2023年7月3日

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荒田 英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学を卒業後、PHP研究所に入社。地域政策分野の研究員として30年以上全国をフィールドワーク。北海道大学特任教授、九州国際大学非常勤講師も務めた。

荒田 英知 (あらたひでとも) 氏