飛躍の源泉

アイデア銭湯

立教大学経済学部教授(金融論)
山口 義行 氏

構造不況業種の典型ともいわれる「銭湯」。大阪の場合、20年前には府内に2000軒以上あったが、現在では500軒ほどまで激減しているという。そんな厳しい環境下でも、斬新なアイデアで売り上げを伸ばし続けている銭湯もある。大阪市東淀川区の森川商事株式会社が経営する「昭和湯」もそのひとつだ。

客が1人しかいなくても、そのために大量の湯を沸かさなくてはならないのが銭湯。取締役の森川晃夫氏は、1人でも多くの客に来てもらえるようにと、様々な仕掛けを試みた。

たとえば、「アヒル風呂」。子どもたちがお風呂で遊ぶ黄色いアヒルのおもちゃを、なんと2000個も湯船に浮かべた。この斬新なアイデアは新聞でも取り上げられ、それまで銭湯に行ったことがなかった新たな客を呼びこむことに成功した。昆布を浮かべた「昆布風呂」は「肌にいい」「体にいい」が売りになった。さらに土曜日限定の「朝風呂」…。

1日100人の来客が損益分岐点だという。昭和湯にはその2.5倍の約250人もの客が日々通う。森川氏は銭湯近くにゲストハウスをつくり、海外からの旅行者に日本の銭湯文化を体感してもらうことも計画。地域の固定客に支持されるだけではなく、斬新なアイデアで新たな客層の取り込みに挑戦し続ける。

2015年11月23日

昭和湯(森川商事株式会社) :

大阪市東淀川区淡路4-33-1
【昭和湯(森川商事株式会社) HP】

過去記事一覧

1951年愛知県生まれ。
2001年に立教大学経済学部教授に就任。外務省参与として中小企業の海外展開、関東経済産業局「新連携支援」政策の事業評価委員長として中小企業連携支援にかかわるほか、企業経営者との勉強会を全国で開催するなど、自ら中小企業支援を積極的に展開。
【山口義行・公式HP】

山口義行