時代を読む

分譲マンションの不都合な未来

大阪経済法科大学
経済学部教授
米山秀隆 氏

分譲マンションを買う理由として「賃貸では資産として残らない」「戸建てに比べ近所づきあいの煩わしさがない」などが挙げられることが多い。しかし、資産価値維持のためには修繕費の十分な積み立てが必要であり、その合意のためには所有者間の日頃からの意思疎通が欠かせない。

仮に15年周期で大規模修繕する場合、築60年で4回の修繕を終えることになり、まずそのための積立金が必要。仮に建物寿命80年とすると、それ以降は建て替えるか、解体・売却するかの選択に直面する。

前者の場合、建て替え資金が必要になる。後者の場合、敷地に解体費用以上の利用価値があれば購入者が解体するだろうが、そうでなければ買い手がつかず老朽化物件が放置される可能性が出てくる。これを防ぐためには分譲マンションも戸建てと同様、所有者が解体の責任を果たす必要がある。つまり、分譲マンションの終末期には建て替え費用か、解体費用が必要になるのだ。

現にこの点に気づき、修繕費とは別に解体費用を積み立てる例も出ている。北海道旭川市の事例(1996年竣工)では建て替えは経済的に難しく、築80年で使い尽くした後は解体するため、その費用を積み立てていくことを2022年に決定した。こうした取り組みが広がらなければ空き家問題が分譲マンションに波及し、荒廃物件が放置されるという近未来が訪れる可能性もゼロではない。

2023年9月19日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研などを経て2020年9月から現職。専門は住宅・土地政策、日本経済。主な著書に、『捨てられる土地と家』(ウェッジ)、『縮小まちづくり』(時事通信社)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社)など。
【米山秀隆オフィシャルサイト】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏