日本の問題

観光立国

PHP総研 主席研究員
荒田英知 氏

2015年に日本を訪れた外国人観光客(インバウンド)が12月19日時点で1900万人を突破した。2014年比で5割近い伸びとなり、「2020年に2000万人」とする観光立国の政府目標を2016年にも達成しそうな勢いである。

「爆買い」という言葉に象徴される、外国人客による消費額も3兆円を超えたと推計され、日本の旅行者の海外での消費を上回り、通年の旅行収支が初めて黒字化する見通しとなった。日本国内の旅行市場は少子高齢化によりすでに頭打ちで、円安などを背景としたインバウンドの急増は、関連業界にとっては神風ともいえる。

しかし、課題も山積する。出入国管理や多言語対応に加え、宿泊先・移動手段の確保が増加スピードに追い付かないのだ。「民泊」をはじめとした規制緩和による対応が求められるが、既得権とのせめぎ合いをどう調整するかはこれからである。

また、訪問先が東京-京都-大阪の「ゴールデンルート」に偏っており、いかにして他地域に呼び込むかも問われる。インバウンド急増を「観光立国」につなげられるか、2016年は分かれ目になりそうだ。

2016年1月18日

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荒田英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学法文学部を卒業。同年、PHP研究所入社。各種研究プロジェクトのコーディネーターを務めた後、地域政策分野の研究に専念。2010年10月から現職。全国各地を数多くフィールドワークしている。

荒田(あらた) 英知(ひでとも)氏