日本の問題

ふるさと納税

PHP総研 主席研究員
荒田英知 氏

個人が任意の自治体に寄付をすると、それに応じた額が住民税から控除される「ふるさと納税」が広がりを見せている。本来、住民税は居住自治体が提供する行政サービスの対価とされるが、都市部に偏在する税収を、個人の意思で地方に還流できる制度として2008年にスタートした。

2011年には東日本大震災の被災地支援目的での活用が急増。その後、2013年ごろから返礼品として地元の特産物を贈る自治体が増えたことで人気に火がついた。「お得」な自治体には申し込みが殺到し、メディアでもたびたび話題となっている。

2014年度の寄付額で全国3位の北海道上士幌(かみしほろ)町には牛肉などの特典に約9億円が集まった。町税収入は約6億円なのでその大きさがわかる。町はふるさと納税を原資に、認定こども園を10年間無料にした。制度の趣旨にかなう施策だ。

2015年度からは控除枠が1割から2割に拡大。確定申告が不要な特例の導入やクレジット決済の普及も相まって、前年度を上回る勢いだ。過熱気味ともいわれる返礼品競争から、今後は使い道を競い合う次元に深化することが求められる。

2016年2月15日

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荒田英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学法文学部を卒業。同年、PHP研究所入社。各種研究プロジェクトのコーディネーターを務めた後、地域政策分野の研究に専念。2010年10月から現職。全国各地を数多くフィールドワークしている。

荒田(あらた) 英知(ひでとも)氏