きらめき企業

東京23区唯一の乾麺メーカー
伝統と革新の両立で存在感

神戸国際大学経済学部教授
中村 智彦 氏

NHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公、渋沢栄一が長らく暮らしたのが、東京都北区の飛鳥山。23区初という期間限定の大河ドラマ館やおみやげ館が飛鳥山公園内にでき、盛り上がりを見せる中、人気のおみやげとなっているのが、地元・北区の江戸玉川屋(玉川食品株式会社)がつくる乾麺だ。

本社工場に伺うと、ビルの中で長い麺を吊り下げて乾燥させていた。実は、こうした乾麺づくりの光景を見ることができるのは23区ではここだけだ。1935(昭和10)年に創業し、当地で乾麺製造を続けてきた同社。「もともとは地元の人たちが粉を持ち込んで、それを麺にすることから始まったようです」と代表取締役の関根康弘氏。

「92℃の熱湯で材料を練り、通常の4倍以上の時間をかけて乾燥させる」という製法など「効率の対極にある麺づくり」を掲げ、伝統的な技法と職人の技術を融合させた製造にこだわる。一方で、新しい商品の開発にも積極的で、地元大学や有名レストランとのコラボレーションによる乾麺を開発したほか、今回の大河ドラマ館のおみやげ用には、渋沢栄一が晩年愛したといわれるオートミールを練りこんだ乾麺を商品化した。東京都内で確かな経営を続ける「ものづくり企業」の代表といえるだろう。

2021年5月10日

玉川食品株式会社

東京都北区豊島7-5-12
【江戸玉川屋 HP】

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中村智彦氏

1964年生まれ。
大阪府立産業開発研究所などを経て2007年から神戸国際大学経済学部教授。専門である中小企業論・地域経済論では、現地での調査・研究を重視。中小企業間のネットワーク構築や地域経済振興プロジェクトにも数多く参画している。
【中村智彦(オフィシャルページ)】

中村智彦氏