飛躍の源泉

美濃と和紙を元氣に

名城大学経済学部特任助手
大前 智文 氏

岐阜県美濃市に立地する機械抄(す)き美濃和紙メーカーの丸重製紙企業組合。美濃和紙産地で多品種・小ロット生産、特急・特注品生産に対応する小回りの利く原紙メーカーの地位を確立するとともに、和紙業界の枠にとらわれない取り組みも模索する。

「組合員の社会的地位向上と人間らしい生活の実現」を理念とする企業組合として、1951(昭和26)年に創業。小規模ながら機敏な対応で生き残りを図ってきた。大きな転機は2000年代後半。和紙業界の衰退傾向が続く中、地元への思いと事業継続の重要性を自覚した現専務理事の辻晃一氏、現常務理事の辻将之氏の兄弟が家業を継ぐことを決断した。

同社は「美濃と和紙を元氣にする会社」として、大局的な観点から自社のあり方と地域・産業の活性化を結びつけて考える。晃一氏は「機械抄きメーカーとしては最小規模だが、自由に動ける強みがある」と話す。積極的な工場見学の受け入れや情報発信などで、人を工場や町に呼び込み、新たな展開やつながりの機会としている。一方、将之氏は生産現場を支え、品質・納期・生産性の向上を統括。柔軟ながら軸がぶれない「和紙ブラザーズ」の両輪が機能し、地域と業界に新風を吹き込む。

2016年3月7日

丸重製紙企業組合 :

岐阜県美濃市御手洗464
【丸重製紙企業組合 HP】

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大前智文

1982年愛知県生まれ。
2013年に名城大学経済学部特任助手に就任。同年より日本中小企業学会幹事。駆け出しの研究者としてフィールドワークを重ね、中小企業に関する調査・研究に取り組む。

大前智文