日本の問題

廃校利用

九州国際大学非常勤講師
荒田英知 氏

少子化による児童生徒数の減少や市町村合併の影響を受けて、全国的に廃校が増加している。文部科学省によれば、2015年度までの14年間に公立の小・中・高等学校のうち6,811校がその歴史に幕を下ろした。過疎地のみならず都市部でも拍車がかかっている。

施設が現存する廃校のうち、約7割は新たな用途に転用されている。地域の体育館や公民館などの社会教育施設や、福祉施設や保育所など行政関連の施設に生まれ変わった例が多い。

最近ではユニークな活用策が目立つ。学校というアイデンティティを生かした体験型の交流・宿泊施設が各地で人気を博している。あるいは企業が注目し、日本酒やワインの醸造所、高級魚の養殖場や植物工場、サテライトオフィスやレコーディングスタジオなど全く異なる用途で蘇らせる例も出てきた。

学校の建物は大きな間取りで頑丈につくられているため、リノベーション(改修)の余地が大きい。また、安全な場所にあり地域住民の心の拠り所であったことも見逃せない価値だ。廃校利用に唯一絶対の策はない。それだけに、地域を再生しようとする熱意や創意を測るバロメーターともいえるだろう。

2018年9月3日

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荒田英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学法文学部を卒業。同年、PHP研究所入社。各種研究プロジェクトのコーディネーターを務めた後、地域政策分野の研究に専念。2017年10月から現職。全国各地を数多くフィールドワークしている。

荒田(あらた) 英知(ひでとも)氏