ベンチャー企業の「出口」
学習院大学国際社会科学部教授
伊藤元重 氏
伊藤元重 氏
ベンチャービジネスでは、最終的な目標が株式市場に上場することのように考えられる傾向が強い。実際、上場を果たして大金を手にした経営者のことが話題になることは少なくない。しかし、シリコンバレーなどで話を聞いてみると、株式を上場するより大企業に買ってもらうことのほうがはるかに多いようだ。
昔、あるベンチャー企業の経営者が言っていた。「新しいアイデアでベンチャーを立ち上げる能力と、それをしっかりと大きなビジネスに育て上げる能力とは違う」と。
新しいビジネスを起こす時には、斬新な発想とリスクを取る覚悟が重要となるが、それを育てていくのには全く別の能力が求められる。「企業を大きく育てていくのは、バスケットボールで地道にドリブルを続けるようなところがある」とも、この経営者は言っていた。
大企業にとっても、新しい発想の技術やビジネスは、自社の中からだけでは出てきにくい。だから、多くの大企業が買収できそうなベンチャー企業を探している。そうした大企業が増えれば、自分もベンチャー企業を立ち上げて一旗あげようという若者も増えるだろう。そうした好循環が生まれることを期待したい。
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1951年生まれ。
米国ヒューストン大学経済学部助教授、東京大学経済学部助教授などを経て1993~2016年東京大学の経済学部と大学院経済学研究科の教授を歴任。2007~2009年は大学院経済学研究科研究科長(経済学部長)。現在、学習院大学国際社会科学部教授、東京大学名誉教授。
【伊藤元重研究室】