飛躍の源泉

仏具販売を革新

立教大学経済学部教授(金融論)
山口 義行 氏

近年、仏壇仏具を持たない家庭が増え、仏壇市場は縮小傾向にある。京都市下京区の有限会社香華堂も、100年余の歴史の中でかつてない厳しい時代を生きている。現代表取締役社長の成影幸仁氏が会社を引き継いでからもしばらくは「自転車操業」が続いていた。

業界の縮小に加え、「他業種・他業態への新規参入が難しいのが京都の土地柄」と成影氏。伝統を生かしながら、その上に新たなビジネスを構築していくしかないと、「業界の常識」を越える試みにチャレンジしていった。

そのひとつが仏具業界では珍しかったネット販売。「業界に長くいる自分では先入観にとらわれがち」と、商品ラインアップは専務である妻に任せた。ペンダント形の遺骨入れから巫女さんの衣装まで、季節ごとに商品も入れ替えながら品ぞろえの多様化に努めた。その甲斐あって、1年目はわずかだった売上高も2年目から着実に成長軌道を歩んでいる。

現在は、オリジナル商品として寺の本堂に飾る人工松にも力を入れる。商品を送るだけでなく、見本を持って寺を訪れ、サイズや現場の雰囲気に合わせる出張販売も行っている。「京都ブランドにあぐらをかいていてはいけません」と成影氏。「伝統とは革新の連続」―それは京都の仏具店にもあてはまる。

2016年3月28日

有限会社香華堂 :

京都市下京区松原通新町東入ル中野之町166
【有限会社香華堂 HP】

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山口義行(やまぐちよしゆき)氏

1951年愛知県生まれ。
2001年に立教大学経済学部教授に就任。外務省参与として中小企業の海外展開、関東経済産業局「新連携支援」政策の事業評価委員長として中小企業連携支援にかかわるほか、企業経営者との勉強会を全国で開催するなど、自ら中小企業支援を積極的に展開。
【山口義行・公式HP】

山口義行氏