日本の問題

都市の高齢化

PHP総研 主席研究員
荒田英知 氏

戦後、急速な都市化が進んだ日本は、都市部の税収を、交付金や補助金で地方に分配することで、均質な行政サービスを確保してきた。高度成長期以降、若年層の都市への流出が進んだ地方からすれば、この構図は「税による仕送り」と説明できた。

ところが、今後は都市部での高齢化が急速に進む。医療介護費が急増する75歳以上の後期高齢者数の伸び率を2010年と2040年の比率でみると、全国平均157%に対して、政令指定都市20市の平均は189%に達する。都市化が先行してきた東京23区の168%を上回る伸びだ。

指定都市市長会は、高齢化の進展で全国の政令指定都市が負担する医療・介護・生活保護の社会保障関係費は、2040年には2013年の2.4倍に達すると試算した。大幅な財源不足が生じ、都市から地方に税収を回す余力はなくなってしまう。

都市の高齢化が突きつけるのは、従来型システムとの決別だ。高齢者の定義をはじめ、私たちの勤労観も抜本的な変革が避けて通れないだろう。そのうえで、都市と地方の新たな共存モデルを編み出すことが求められている。

2016年7月25日

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荒田英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学法文学部を卒業。同年、PHP研究所入社。各種研究プロジェクトのコーディネーターを務めた後、地域政策分野の研究に専念。2010年10月から現職。全国各地を数多くフィールドワークしている。

荒田(あらた) 英知(ひでとも)氏