飛躍の源泉

海から浜への再挑戦

神戸国際大学経済学部教授
中村 智彦 氏

イカ釣り船に約40年間乗り込んで、北海道から沖縄近海までイカを追いかけてきたと聞き、どんなに屈強な方かと思いきや、現れたのは小柄で物静かな方だった。福井県福井市の「越廼(こしの)漁業協同組合ぬかちゃんグループ」の代表、上野志津子さん78歳。船を息子に継がせて、浜に戻ったら、地域の衰退ぶりに驚いた。上野さんは「全国各地の港でおいしいものを食べたが、越廼の海産物に勝るものはない」と断言する。

地域を活性化するために、上野さんが始めたのが地元の伝統の味を再評価して商品化すること。漁協に開発グループを立ち上げ、魚を糠(ぬか)に漬けこんだ「へしこ」や、近海に生える海藻「あかもく」などを商品化した。量産ではなく、丁寧に作り込むことにこだわり、「へしこ」なら1年以上糠に漬け込み、注文が来てから取り出して包装し、発送。魚だけではなくイカの「へしこ」も開発、パスタやサラダに使えるようにオリーブオイルに漬け込んだ。「やりたいこと、作りたいものはいっぱいある」と上野さんは言う。

6次産業化、農商工連携といっても、その実状は難題山積。海が大好きな上野さんの前向きさと元気さが生み出す新しい商品の数々から学ぶべきことはたくさんある。

2016年6月20日

越廼漁業協同組合女性部 ぬかちゃんグループ :

福井県福井市茱崎14-32
【越廼漁業協同組合女性部 ぬかちゃんグループ HP】

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中村智彦氏

1964年生まれ。
大阪府立産業開発研究所などを経て2007年から神戸国際大学経済学部教授。専門である中小企業論・地域経済論では、現地での調査・研究を重視。中小企業間のネットワーク構築や地域経済振興プロジェクトにも数多く参画している。
【凡才中村教授の憂鬱HP】

中村智彦氏