日本の問題

根強い新築志向

富士通総研 主席研究員
米山秀隆 氏

日本では新築志向が根強い。中古を購入する割合は約15%に過ぎず、欧米の7~9割に比べ格段に低い。「新しもの好き」が指摘されるが、住宅市場の構造が新築志向を強めた面もある。日本でも戦前はいったん建てた住宅は必要な手入れを行い、長く使うのが普通だった。ところが、戦後から高度成長期にかけての住宅不足を解消するため、新築が大量供給された時代に考え方が変わった。供給が急がれ、建物の質は落ちた。それでも土地神話の時代は土地を先に取得するのが重要で、建物価値は重要視されなかった。業者にとっては、住宅が短期間で建て替えられるのは好都合だった。

こうして戦後は短期間で建てては壊すことを繰り返し、中古は良い物件がないとの固定観念が植え付けられ、新築志向が強まった。これを変えるのは容易ではないが、最近は中古でも、業者が買い取って改修し、再販売する物件の人気が出ている。改修済みであれば抵抗が少なく、かつ割安なためである。国は改修済み物件の流通促進を図るため、優良物件を登録する「プレミアム既存(中古)住宅」の仕組みを年度内に構築する予定である。

2016年9月12日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏