日本の問題

オーバーツーリズム

九州国際大学非常勤講師
荒田英知 氏

2018年の訪日外国人観光客が初めて3,000万人を突破した。ここ5年間で約3倍増という驚異的な伸びで、2020年に4,000万人という政府目標も射程に入ってきた。

しかし、急増したが故の課題もある。特定の場所に観光客が大挙して押し寄せ、地元住民の生活に支障をきたす例が生じているのだ。これが「オーバーツーリズム」で、観光公害と呼ばれることもある。

京都市は外国人観光客にとっては筆頭の人気を誇るが、観光スポットではバス待ちの行列が長く伸びて地元の人が乗りたいバスに乗れないことが日常化している。観光客のバス利用を促進してきたことが皮肉な現象を生んだ。

神奈川県鎌倉市では路地裏へのゴミのポイ捨てが問題化。また、人気アニメに登場した踏切がファンの写真スポットになり、危険な行為が目立つようになり警備員を配置することになった。

問題が発生した各地では今後対策が進み、観光客と地元住民の折り合いが模索されていくだろう。加えて重要なのは、まだ知られていない全国の観光資源を効果的に情報発信し、特定地域への過度の集中を緩和していくことである。日本にはそれだけの魅力があるはずだ。

2019年1月15日

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荒田英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学法文学部を卒業。同年、PHP研究所入社。各種研究プロジェクトのコーディネーターを務めた後、地域政策分野の研究に専念。2017年10月から現職。全国各地を数多くフィールドワークしている。

荒田(あらた) 英知(ひでとも)氏