日本の問題

「黒田日銀」の正念場

青山学院大学教授、元財務官
榊原英資氏

2013年3月20日に日本銀行総裁に就任した黒田東彦氏は異次元金融緩和と呼ばれる積極金融緩和策を導入、1ドル=95円前後だった円ドル相場を2015年3月には1ドル=120円台まで押し下げた。2013年3月に1万2397.91円(終値)だった日経平均株価も2015年3月には1万9206.99円まで上昇、6月には月平均で2万円を超えた。

IMFの統計(2016年4月)では、日本の経済成長率も2014年には消費税率引き上げでマイナスに陥るが、翌2015年には約0.47%に回復し、2016年も約0.49%になるとされている(推計)。「黒田日銀」の積極的金融緩和策は一定の成功を得たと判断していいのだろう。ただ、状況は2016年に入って変化してきている。円ドルレートは2016年に入って円高に推移し、9月には1ドル=100円割れをうかがう状況になってきているし、日経平均も9月中旬には1万7000円を割ってきている。

積極金融緩和の効果も次第に薄れ、経済は下降局面。さて日銀はどうするのか。「黒田日銀」の正念場だといえよう。

2016年10月3日

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榊原英資 さかきばらえいすけ氏

1941年生まれ。
1965年大蔵省(現財務省)入省。東海財務局長、大臣官房審議官(国際金融局担当)、国際金融局次長、国際金融局長を経て1997~1999年財務官。現在は青山学院大学教授、財団法人インド経済研究所理事長。
【財団法人インド経済研究所HP】

榊原英資氏