飛躍の源泉

チャンスをとらえて国際化

東京経済大学経営学部准教授
山本 聡 氏

東京都立川市の株式会社カオルデザインは不動産広告を中心に広告デザイン・プロモーション事業を展開している。従業員数は現在25人。代表取締役の香取敏之氏は複数の中小不動産会社に勤務し、23歳で広告担当となった。当初は外部の広告会社に発注していたが、やがて自ら広告を制作するようになり、大幅な経費削減を達成。この成功体験から広告会社の起業を考えるようになった。

1998年、香取氏は27歳で起業を実現。当初は自宅を職場とした。「顧客と一緒に考え、提案する」営業スタイルを軸に業績を拡大しつつ、在日米軍横田基地内の情報誌の制作など新しいチャレンジも始めた。

特筆すべきは海外オフィスの設立だ。ある時、香取氏が顧客の依頼で上海を訪問した際、現地の人々の購買意欲の高さに驚いたという。日系企業の担当者からは「広告の発注先に困っている」との声も聞かれた。これをビジネスチャンスととらえ、2012年6月の管理職会議で「皆で中国の空気を吸いに行かないか」と提案。これをきっかけに話が進み、翌2013年3月には上海への現地法人設立が実現した。経営者の旺盛な起業家マインドにより、小規模企業がチャンスをとらえて国際化した格好の事例といえるだろう。

2016年10月31日

株式会社カオルデザイン :

東京都立川市栄町4-13-4

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山本聡

1978年生まれ。
機械振興協会経済研究所を経て、2012年東京経済大学経営学部専任講師として着任、2015年准教授(担当は中小企業経営論)。金型や部品加工など素形材産業を主な対象としながら、国内外の中小企業の経営体制の変化を解明することが研究テーマ。経営者や技術者向けにレポートを執筆するほか、さまざまなセミナー講師も務める。
【山本聡の研究室】

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