日本の問題

マイナス金利政策の意味

富士通総研 主席研究員
米山秀隆 氏

金融緩和では金利の引き下げが行われるが、より正確には、実質金利が操作対象となる。普通、金利といえば名目金利であるが、物価上昇局面では、1年後の名目金利が1%でも、1年後に物価が1%上昇すれば、金利による受け取り増加分は物価上昇分で相殺される。すなわち、実質的な金利は、名目金利から物価上昇率を引いた0%となる。これが実質金利である。

実質金利の水準で、景気に対し引き締めにも緩和にもならない中立的な水準が自然利子率と呼ばれる。自然利子率は、経済の実力である潜在成長率によって決まる。潜在成長率が高いほど、自然利子率も高くなる。日本では潜在成長率低下に伴い、自然利子率が下がり、現在0%程度である。

金融を緩和し、景気を刺激するためには、現実の実質金利を自然利子率(0%)より低くする必要があるが、日本では名目金利は0%程度、物価上昇率はマイナスとなり、名目金利から物価上昇率を引いた実質金利がプラスの領域で推移していた。そこで、実質金利を引き下げるため、名目金利をマイナスにするマイナス金利政策が行われるに至ったというわけである。

2016年12月5日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏