日本の問題

残された政策手段

富士通総研 主席研究員
米山秀隆 氏

世界経済が同時減速しつつあり、日本経済が想定以上に下振れした場合、金融政策でどのような対応ができるかが市場の関心事となっている。主要な手段としては、国債買入れ拡大、ETF(上場投資信託)の買入れ拡大、金利引き下げの3つがある。国債買入れを再拡大するとともに、金利変動幅を抑える選択肢はあり得るが、これまでの事実上の引締めは、国債市場の機能停止や金融機関の利ざや縮小という副作用に配慮した面もあり、単純に元に戻せばいいわけではない。ETFの買入れ拡大も株式市場のゆがみを大きくする。

おそらくは景気刺激策として残された手段のひとつは、減税や財政支出拡大と明確に連動させた形の国債買入れ拡大といった、財政支出の日銀によるファイナンスであろう。この場合、消費税率引上げ延期と連動させた国債買入れ拡大措置も考えられる。景気下振れに伴い、消費者物価上昇率が1%を大幅に下回る状況になった場合、政府、日銀が一体となって景気を支える選択肢を取らざるをえなくなっていく。もっとも日銀は政府と独立して政策決定することになっており、財政と金融政策を連動させる場合でもそこはあうんの呼吸になるだろう。

2019年1月28日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏