飛躍の源泉

人の輪を再生する地域活性化

神戸国際大学経済学部教授
中村 智彦 氏

東京の台東区と文京区にまたがる通称「谷根千」地域が人気エリアとなったのはこの20年くらいだろうか。古い住宅や寺社が残り、路地奥にカフェやギャラリーが点在、週末にはまち歩きを楽しむ人がたくさんいる。

そんな谷根千の一角の上野桜木に戦前から建つ和風建築の住居が3戸残っていた。老朽化し、取り壊しも検討されていたが、そのたたずまいにほれ込んだ地元の人たちが、「ぜひ活用したい」とオーナーの塚越商事株式会社と交渉。NPO法人たいとう歴史都市研究会の粘り強い働きかけもあり、2015年3月、店舗、住居、ギャラリーを配した複合施設「上野桜木あたり」がオープンした。今では朝早くからベーカリーの香ばしいパンが焼ける匂いが漂い、昼はショップやカフェ、ギャラリーで、夕方になるとビアレストランで食事などを楽しむ人たちの姿が通りから見える。

この施設が特徴的なのは、人々を結びつける役割を担っている点。「この地域は古くからの住民に加え、全国から移り住んできた人も多い。ここを訪れる人たちも含め、人と人をつなぐ場所になればいいなと思っています」と、研究会副理事の椎原晶子氏は話す。研究会の活動は若い人たちを動かし、起業や地域づくりなどの動きにもつながっている。

2016年12月5日

上野桜木あたり :

東京都台東区上野桜木2丁目15-6 あたり
【上野桜木あたり HP】

過去記事一覧

中村智彦氏

1964年生まれ。
大阪府立産業開発研究所などを経て2007年から神戸国際大学経済学部教授。専門である中小企業論・地域経済論では、現地での調査・研究を重視。中小企業間のネットワーク構築や地域経済振興プロジェクトにも数多く参画している。
【凡才中村教授の憂鬱HP】

中村智彦氏