日本の問題

保護主義の台頭

富士通総研 主席研究員
米山秀隆 氏

自由貿易は利益になる段階はあっても、それが永続するわけではない。行き過ぎると自由貿易の利益を享受できる層とそうでない層との格差が拡大して不満が高まる。しかも賃金が全体としては抑制され、需要不足をもたらす。その一端と思われる現象が、リーマンショック以降、顕著になった世界的な低金利、低インフレである。世界的に低成長に陥っていることを意味する。

実際、保護や規制が多かった1960年代や1970年代の方が現在より高いペースで成長していた。グローバル化が、低インフレを広げていることを示すひとつの証左は、低インフレがサービス業よりも製造業、とりわけ貿易財で顕著になっているという事実である。

自由貿易の行き過ぎが停滞感を強める要因になっていることが、保護主義台頭の背景にある。グローバル化の利益を享受できない労働者の不満が頂点に達し、米英においては投票による静かな革命が起こった。反グローバリズムや保護主義は一過性のものでなく、労働者の不満が解消されるまで、これまでの秩序を再構築する形で進んでいくと考えるべきである。

2017年3月27日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所を経て1996年富士通総研。2007~2010年慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員も務める。専門は、日本経済、経済政策、住宅・土地政策。
【富士通総研・研究員紹介】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏