日本の問題

東証一部の3分の1が降格?

経済ジャーナリスト
大西良雄 氏

東京証券取引所は、現在2,140社余りと市場の中で多数を占める一部上場企業を絞り込む方向で検討を進めている。①一部上場を維持できる基準を時価総額250億円以上に厳格化して上場企業数を圧縮する、②二部やマザーズからの一部昇格基準を現行の40億円から引き上げて昇格企業数を絞り込む方針。市場も二部とジャスダックの大部分を「スタンダード市場」に、マザーズとジャスダックの一部を「新興市場」に統合し、新「一部市場」と合わせて3市場に整理する方向だ(新市場名は仮称)。

東証の一部上場企業は時価総額約22兆円もの巨大企業から18億円ほどの企業まであり玉石混淆。小粒で業績が停滞している企業も多い。東証一部が日本を代表する企業で構成されるとは言いがたいのが実情だ。仮に一部上場企業の基準を時価総額250億円以上として厳密に運用すれば、現在の一部上場企業の3分の1ほどにあたる約720社が降格されることになる。

東証の提案は今後、金融庁金融審議会で検討される。時価総額の基準など未確定な部分もあるが、本決まりとなれば2020年4月から3年以上の猶予期間を経て適用される。

降格企業は一部上場のブランドを失い、資金調達、人材採用、株価維持などで大きなハンディを背負う。新基準適用までの猶予期間に、対象企業は時価総額を250億円以上にする必死の経営努力が必要になる。

2019年5月13日

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大西良雄 氏

1945年生まれ。
上智大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。記者を経て、「週刊東洋経済」編集長、取締役出版局長、同営業局長、常務取締役第一編集局長を歴任。2006年に退任後、経済ジャーナリストとして独立。早稲田大学オープンカレッジ講師も務める。

大西(おおにし) 良雄(良雄)氏