日本の問題

移民・難民を巡るEUの行方

青山学院大学特別招聘教授、元財務官
榊原英資氏

2016年6月23日に行われた国民投票で僅差ながらEU離脱派が勝利し、イギリスはEUを離脱することになった。EUからの移民や難民の大量流入が離脱派を勢いづけたといわれている。

2017年5月7日に行われたフランス大統領選の決選投票でも、国民戦線を率いるマリーヌ・ル・ペン氏は、選挙公約で「EU離脱の国民投票を実施する」と宣言していた。フランス国民はエマニュエル・マクロン氏を選び、フランスのEU離脱は回避されたが、イタリアでもEU離脱を主張する新政党五つ星運動がローマ市長選、トリノ市長選で勝利するなど、EU離脱の動きが強まっている。

EU内の自由な移民の動きがIS(イスラム国)などのテロの増大を生み、さらには東欧系移民による失業問題などで移民に対する反発が各国で拡大してきているのだ。移民・難民を積極的に受け入れてきたドイツでも反移民の動きが強まってきている。

日本は現時点で移民・難民は多くないが、ことは世界規模の問題。EUそしてアメリカでもこの問題が重要な争点になっていることに留意する必要があろう。

2017年7月10日

過去記事一覧

榊原英資 さかきばらえいすけ氏

1941年生まれ。
1965年大蔵省(現財務省)入省。東海財務局長、大臣官房審議官(国際金融局担当)、国際金融局次長、国際金融局長を経て1997~1999年財務官。現在は青山学院大学特別招聘教授、財団法人インド経済研究所理事長。
【財団法人インド経済研究所HP】

榊原英資氏