日本の問題

事業承継税制の拡充

経済ジャーナリスト
大西良雄 氏

政府・与党は2018年度税制改正で、事業承継にかかる相続税優遇の拡充を目指している。

現在、先代経営者から後継者が非上場株式を相続する場合、全株式の3分の2を対象に、相続税額の8割まで納税猶予されるが、これを、全株式を対象に100%に引き上げる。5年平均で8割の雇用を維持するなどの要件も緩和し、事業承継をしやすくして廃業を減らすのが狙いだ。

日本政策金融公庫総合研究所の調査では、60歳以上の中小企業経営者のうち50%超が廃業を予定していると回答し、その数は100万社以上に上るとみられる。だが、2008年に発足した相続税優遇制度の認定件数は985件(2016年9月末累計)にとどまっている。

同研究所の調査によれば「子どもに継ぐ意思がない」など後継者難を理由とする廃業予定は計28.5%。最も多い理由は「当初から自分の代でやめようと思っていた」で、「事業に将来性がない」という回答も多い。

一方で、事業に将来性があれば、親族以外にも後継者が現れるし、買収したいという会社も現れるだろう。相続税以外に企業買収などにかかる税対策も重要だ。

2017年12月18日

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大西良雄 氏

1945年生まれ。
上智大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。記者を経て、「週刊東洋経済」編集長、取締役出版局長、同営業局長、常務取締役第一編集局長を歴任。2006年に退任後、経済ジャーナリストとして独立。早稲田大学オープンカレッジ講師も務める。

大西(おおにし) 良雄(良雄)氏