日本の問題

サマーダボスに出席して

東洋大学国際学部教授・慶應義塾大学名誉教授
竹中 平蔵 氏

世界の経済リーダーが集まる国際会議として、ダボス会議が知られている。この会議は、毎年1月末にスイスのダボスで開催されるが、2007年から夏の時期に中国で成長企業を対象にした通称「サマーダボス」が開催されるようになった。今年は7月の初旬、李克強首相も出席し大連で開催された。今年の会議は、2つの点で大きな特色があった。

第一は、李首相が驚くほど強気な経済見通しを示したこと。米中対立で中国経済の減速が懸念される中、李首相は「財政・金融政策をフル活用し、高い成長を維持する」という主旨を繰り返し述べた。しかし、政策を動員するという表明自体、中国経済の鈍化傾向を認めていることになろう。事実、その後発表された4~6月期の中国のGDP成長率は6.2%と、20数年ぶりの低成長となった。

第二は、李首相のようなビッグネームが大きな会場でスピーチするという光景が、首相以外にほとんど見られなかったことだ。変わって、HUBと呼ばれる30~40人程度の小会場が多数つくられ、そこで各30分程度の短いセッションが行われた。大きなスピーチではなく、第4次産業革命で何が起こりつつあるか、その最前線の状況を聞きながら、何らかのヒントを得たい…。そんな意図が明確に見られる会議だった。

小規模で効率的な会議のスタイルそのものが、第4次産業革命の時代を象徴しているようにも思えた。

2019年9月24日

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竹中平蔵 氏

1951年生まれ。
ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学教授などを経て2001年の小泉内閣発足後、経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣などの閣僚を歴任。現在、東洋大学国際学部教授、慶應義塾大学名誉教授。政府の各種会議のメンバーも務める。
【竹中平蔵公式ウェブサイト】

竹中平蔵(たけなか へいぞう)