日本の問題

革新の基盤、「5G」商用化

経済ジャーナリスト
大西良雄 氏

第5世代移動通信システム(5G)商用サービスがこの3月にも始まる。現在の4Gに比べ、通信速度が10倍の高速となるほか、基地局と端末間の反応ラグを短縮する「超低遅延」や、端末機を「多数同時接続」できる技術が加わる。自動運転やコネクテッドカー、IoTやスマート工場、遠隔操作・遠隔医療など技術革新を促す通信基盤になる。

総務省「電波政策2020懇談会」によると、5Gによって生まれる経済効果は交通・移動・物流分野で21兆円、工場・製造・オフィス分野で13.4兆円、医療・健康・介護分野で5.5兆円、流通・金融・決済分野で3.5兆円など合わせて46.8兆円に上ると推計された。

政府も次世代通信を成長の軸に据え積極支援を行う。2019年度補正予算では早くもポスト5G(6G)を見据えた情報通信システムや先端半導体製造技術の開発に1100億円の予算を計上した。2020年度税制改正では5G投資を行う全国キャリアとローカル5G事業者に対して投資額の15%の税額控除(または30%の特別償却)の法人減税策を導入する。

全国キャリアは5G通信を全国で展開、ローカル5Gは工場や農地、病院、自治体など地域限定で自前の5G通信を展開する。一般企業は全国キャリアの5G通信を活用してどんな新ビジネスを生み出すか、自らローカル5G事業に参入してどんな事業革新を起こすかが問われる。

2020年2月3日

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大西良雄 氏

1945年生まれ。
上智大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。記者を経て、「週刊東洋経済」編集長、取締役出版局長、同営業局長、常務取締役第一編集局長を歴任。2006年に退任後、経済ジャーナリストとして独立。早稲田大学オープンカレッジ講師も務める。

大西(おおにし) 良雄(良雄)氏