飛躍の源泉

からくりの伝統を継ぐ消防ノズル

神戸国際大学経済学部教授
中村 智彦 氏

からくり人形の伝統が残る愛知県。同県安城市で工場の塗装用ノズルを製造・販売する株式会社ケーエスケーは、そんな愛知の「からくり」の伝統を応用した製品を開発した。

発明が大好きで、これまでも様々なものを自分で作り上げてきた代表取締役社長の楠健治郎氏が着目したのは、消防士が使用する消防用ノズル。「調べてみると開発されてから100年以上、変わっていない。世の中に、他にそんなものがありますか?」と楠氏。そこで、消防士が手元で操作することにより、様々な角度で放水することができるノズルを開発した。秘密は、手元の部分の「からくり」だ。

「手元のからくりを操作することにより、消火時に一番合った方法での放水を可能にしたのです」。しかも、従来のノズルとは異なり、広い角度にしても飛距離が落ちないことが消防関係者による実証実験でも確かめられている。ただし、「価格の高さや従来型ノズルが広く普及していることなどから、なかなかうちの製品を使ってもらえない」と楠氏。

しかし、ここ数年、各地で大火が発生し、高齢化や人口減少で消防士の確保も難しくなってきている。「効率を高めるうちのからくりノズルはきっと多くの人の命や財産を守れるはず」と楠氏らは改良に余念がない。

2017年7月10日

消防用可変ノズル からくりノズル(株式会社ケーエスケー) :

愛知県安城市根崎町東新切37
【消防用可変ノズル からくりノズル(株式会社ケーエスケー) HP】

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中村智彦氏

1964年生まれ。
大阪府立産業開発研究所などを経て2007年から神戸国際大学経済学部教授。専門である中小企業論・地域経済論では、現地での調査・研究を重視。中小企業間のネットワーク構築や地域経済振興プロジェクトにも数多く参画している。
【凡才中村教授の憂鬱HP】

中村智彦氏