日本の問題

タワーマンション規制

住宅・土地アナリスト
米山秀隆 氏

タワーマンションは人口増加に大きく寄与するため、立地を歓迎する自治体は多いが、最近では規制に踏み切る自治体も出てきた。

神戸市は条例により、昨年7月にタワーマンションの立地規制を断行した。市中心部のJR三ノ宮駅周辺エリアは住宅建設を原則認めないこととし、その外に広がる山陽新幹線の新神戸駅やJR神戸駅などを含むエリアは、大規模用地を対象に住宅部分に使用できる容積率の上限を引き下げ、タワーマンション建設を事実上不可能にした。

神戸市はタワーマンションが都心部に立地する問題点として、第一に都心への一極集中が進めば、周辺地域の人口減少を招き、鉄道事業の採算悪化や交通の利便性低下を通じ、さらなる人口減少を招く悪循環に陥る可能性を指摘している。

第二に中心部の商業・業務機能が損なわれ、神戸市が目指すショッピングやグルメ、アートシーンを楽しめる街からかけ離れる点を指摘している。神戸市は今後、中心部を魅力ある空間としたうえ、周辺地域も含め、市全体で人口が維持される街づくりを進める意向である。

昨年の豪雨では、地下への浸水被害により電気系統がストップし、生活に支障をきたすなど、タワーマンションの災害時の脆弱性が大きくクローズアップされた。タワーマンション建設は、望ましい街づくりの観点から見直される段階に入っている。

2020年2月17日

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米山秀隆 氏

1963年生まれ。
野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研などの研究員を歴任。専門は住宅・土地政策、日本経済。著書に『捨てられる土地と家』(ウェッジ)、『縮小まちづくり』(時事通信社)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社)など。
【米山秀隆オフィシャルサイト】

米山(よねやま) 秀隆(ひでたか)氏