日本の問題

地方公共交通の再構築

九州国際大学非常勤講師
荒田英知 氏

人口減少と高齢化がひときわ進む地方では、地域住民の移動手段を確保するために、公共交通の再構築が待ったなしの課題になってきた。高齢者の運転免許返納の流れも、これに拍車をかけている。

富山市では、2006年に開業したLRT(次世代型路面電車システム)で富山駅の南北を走る路線を結ぶ直通運転が3月に始まり、沿線に市民の住居を誘導するコンパクトシティ戦略の骨格が完成した。宇都宮市でも2022年にLRTが開業予定だ。

新潟市では都心部の渋滞解消に、連節バスによるBRT(バス高速輸送システム)を2015年に導入した。その後、乗換拠点などを整備した「新バスシステム」が稼働し、利用者増を実現している。BRTは東日本大震災で被災したJR気仙沼線やJR大船渡線でも採用された。

過疎地においては、あらかじめ利用者の申込みを受付け、最適なルートで運行する「デマンドバス」が注目を浴びている。長野県飯綱町では、朝夕は通学生向けに定時運行し、昼間は通院や買い物需要に「デマンド対応」することで、交通空白地域の解消とコスト削減を両立させている。

今後、自動運転が実用化すれば状況は一変する可能性もあろう。しかし、公共交通の役割がなくなることはないから、今のうちに地域に見合った最善の策を講じておくことが、地方創生の重要な基盤になることは間違いない。

2020年4月13日

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荒田英知 氏

1962年、福岡県生まれ。
1985年、鹿児島大学法文学部を卒業。同年、PHP研究所入社。各種研究プロジェクトのコーディネーターを務めた後、地域政策分野の研究に専念。2017年10月から現職。全国各地を数多くフィールドワークしている。

荒田(あらた) 英知(ひでとも)氏